少し前まで、私は
途中で離れるのが苦手だった。
息子と過ごしているときも、
呼ばれたらすぐ行かなきゃ、
一緒にいないといけない、
ちゃんと応えないといけない、
そんな気持ちがどこかにあった。
でも、ずっとそうしていると、
だんだん自分のほうが苦しくなってくる。
疲れているのに動いて、
しんどいのにそのまま付き合って、
最後は余裕がなくなってしまう。
そんな日が何度もあった。
ある日、息子が隣で動画を見ながらお菓子を食べていた。
私はその横で、
イヤホンをして、タブレットでドラマを観た。
たった10分くらい。
ほんの少し、
自分のほうに戻る時間を取った。
そのあいだ、息子は何も言わなかった。
私は静かにドラマを見て、
少しだけ呼吸が深くなった。
それから、息子が話しかけてきたので、
イヤホンを外した。
普通に話せた。
何も壊れていなかった。
たった10分でも、
自分の時間を取ることって大事かもしれないと思った。
また別の日。
息子がずっと、
動画を見ながらダイニングテーブルの周りをぐるぐる歩いていた。
私は最初、つい
「危ないよ」
「聞いてるの?」
と言ってしまった。
言ったあとで、
ああ、触れなくてよかったのに、と思った。
少し反省した。
そのあと、漢方を飲んで、
自分を落ち着かせた。
しばらくして、また息子が歩き始めた。
今度は、歩く先に立って、
「ぶつかりそうだよ〜」と
冗談っぽく言ってみた。
すると息子は
「びっくりした〜」と言って、
こたつに入った。
大きくぶつからずに、
静かに終われた夜だった。
ずっと優しくできるわけじゃない。
ちゃんとした言い方ばかりできるわけでもない。
疲れていたら、
つい強く言ってしまうこともある。
でも、
少し離れる。
落ち着く。
もう一度戻る。
それができれば、
やり直せることもあるんだと思う。
前の私は、
離れたらそのまま関係が崩れてしまう気がしていた。
でも今は、
少し思う。
離れることは、
突き放すことじゃない。
戻るための余白を作ることなんじゃないかと。
ずっと一緒にいなくてもいい。
ずっと応え続けなくてもいい。
少し離れて、
息をついて、
また戻ればいい。
10分だけ離れたら、
ちゃんと戻れた日があった。
そのことを、
私はたぶん忘れないと思う。

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